しばしば他面を見るに、ある時は喜び、ある時は瞋り、ある時は平に、ある時は貪現じ、ある時は痴現じ、ある時は諂曲なり。瞋は地獄、貪は餓鬼、痴は畜生、諂曲は修羅、喜は天、平は人なり。他面の色法においては、六道共にこれあり。
「現代語訳」
たびたび他人の顔を見ますと、ある時は喜びにあふれ、ある時は怒りに燃え、ある時は平静ですが、またある時は貪欲(むさぼりの心)を表情に示し、ある時は愚痴(真理を理解する能力がない)の表情であり、ある時には自分の意志を曲げて人にこびへつらう表情があります。怒るのは地獄界の表情であり、貪るのは餓鬼界、おろかなのは畜生界、へつらいは修羅界、喜ぶのは天界、平静なのは人界です。したがって、他の人の顔の表情という色法(形質)を見ると、地獄界から天界までの六道はそこにすべて揃っているのです。